彼方の海【Day 15】

「ひ・み・ツ」

今日はワラヂと一緒に秘密の海に行ってきました。
ただの小さい磯なんですけどね。
多分、あまり来る人はいないだろう場所です。

ここには少しノスタルジックな思い出があります。
まだ、半袖半ズボンで走りまわっていたあの頃、
ここで泳いだり、潜ったりの毎日を過ごしました。
貝をとって、それを焼いて食べたり。
貝をとって、それを茹でて食べたり。
美味しかった…

いや、貝だけじゃなくて。

陸をぐるっと磯が囲んでいて、
つたって歩いていくと、今にも朽ちそうな一本橋があります。
危ない…なんて思わない。
ただ、冒険の匂いをかぎ取って進むのみ。

亡霊の記憶が残る防空壕を覗いたり、
宝石のごとく輝くガラスのかけらを、友情のしるしに拾ったり。

崖のような岩場をソロリソロリと進んでいくと、
南の島のように透明度の高い海が開けます。

ずっとずっと続く、夏休みのような思い出。

別の人が見たらなんてことない場所なんですけどね。
あの頃の一日はとても長かったな、と感慨深くなりながら
この寒い中に水に入らんとするワラヂを、必死で喰いとめた夕暮れです。


冷たいから！


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